ブログ!七転び八起き

出版編集者→ITスタートアップ起業→事業開発コンサルをやっている太田祥平のブログです。

4月8日はとても悲しい日

今日、4月8日はとても悲しい日だ。

編集者時代の友人編集者・鈴木さんが亡くなったという知らせがあった。彼のことを末永く記憶に留めたい。だから、長文になるけれど文章を残したいと思う。

彼との出会いは10年ほど前。とある出版社の同じ編集局に所属した時だ。勝ちパターンの手順を守り本を作る僕。他方、彼は違った。かなりアクロバティックな本作りをしていたのだ。それは文字通り「ええっ!?」と驚くような手法。通常、そのような編集手法ではうまくいかない。

でも、信じられないことが続く。きちんと本ができる。さらに、売れ行きも好調なのだ。彼の主戦場は格闘技本だったが、一般書籍を手がけてもヒット作を生んでいた。「どうして??」と驚く僕。しかし、彼と同じフロアで仕事を続けるうちにその理由が分かった。

  • 愛されキャラ
  • 人懐っこい
  • とにかく物腰が低い

彼が備える3点セットが強みだった。そういう彼だからこそ、取材対象者・ライター・カメラマン・デザイナー・印刷会社の担当者まで、彼の本作りに関わるみんなが「鈴木さんのために」ということで、アクロバティックな本作りながらも売れる本を生み出していたのだ

今思うと、僕の知る「凄い編集者」はみんなそういうキャラクターと言える。文藝春秋の菊池さん(菊池寛のお孫さん)・扶桑社の安堂さん(インド式計算ドリルブームの仕掛人)などなど。鈴木さんを含めて皆さん愛されキャラで人懐っこくて、とにかく物腰が低い。

逆に、尊大でふんぞり返って怒鳴り散らす編集者もいた。でも、そういう人はヒット作を時折生み出しても長続きしなかった。

この「愛されキャラ最強法則」は編集者にかぎらない。

何がしかのプロダクトやサービス作りにおいても同じことが言える。尊大なリーダーは一時的に好調でも長続きしない。愛されキャラのリーダーこそが魔法のようにヒットを生み出し続ける。愛されキャラが率いるチームの発揮するチーム力は絶大なのだ。

そんな鈴木さんとは、仕事だけではなくプライベートでもいろいろとお付き合いをさせていただいた。彼の奥さんと彼が出会った合コンを設定したのも僕だった。その合コン参加者で一番キレイで性格もステキな女性だった彼女が鈴木さんを選んだのも彼の「愛されキャラ」ゆえだろう。

3月23日に彼が脳梗塞で倒れた時。きっと無念だったろうと思う。そんなステキな奥さんをひとりぼっちにする訳にはいかないという想い。だからこそ、最後の力を振り絞って一時的に意識を回復したのではないか。

鈴木さんの足元にも及ばないと思うけれど、この先の人生1日1日を「愛されキャラ」で「人懐っこく」「物腰低く」僕も仕事をしていけたらと思う。それが彼へのメッセージになると信じて。