ブログ!七転び八起き

出版編集者→ITスタートアップ起業→事業開発コンサルをやっている太田祥平のブログです。

【小売】値下げ競争をやめると自社のファンが増える不思議な話2つ

「最安値店以外の店舗は全部負け」という状況は価格comで以前から発生していた現象でした。

 

ですが、Googleショッピングの下記の取り組み。オンラインだけではなくオフラインでも「最安値店以外は戦えない」となると影響は甚大となりそうです。

japan.cnet.com

価格比較の行き着く先は「最安値ショップ以外は淘汰」!?

価格comでは、「最安値店」と「それ以外全店舗」という状況になっていました。それがオンライン・オフラインともに拡大し始めるとすると、

「モノだけを売る業態」の最終形態はSPA(製造小売)のみに

…ということに。「自ら作って自ら売る」店舗なら自店舗が最安値。でも、どこかから仕入れる限りは最安値店とはなりえない未来です。

 

そうした未来で小売店として活路をいだすなら2つの方法が考えられます。

1.ジャパネットたかたのセット販売&ストーリー訴求

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https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Japanet_Takata_Head_2011.JPG

家電量販店との価格競争を避けるため、ジャパネットたかたが行っていることは大きく2つあります。

  1. 価格比較される単品売りは基本的に行わない
  2. 利用シーン提案とともにセット販売を行う

たとえば、

セット販売時「この組み合わせでこうした利用シーンがあるのでお孫さんも大喜びですよ〜」という、

  • ストーリー訴求もあわせて行う

…のが一番大切なポイント。

 

「そうか! それは楽しそう!」と思った瞬間におじいちゃん・おばあちゃんからの電話が殺到。ジャパネットたかたにわたしが在籍していた当時の強烈な記憶です。

 

こうして最安値比較をする暇も与えないのがジャパネットたかたなのです。

 

2.商品を用いた利活用体験課金でのファンコミュニティー作り

ストーリー訴求の派生ですが、商品を用いた

  • 利活用の体験に対してお金を払ってもらうアプローチ。

具体的には、

  • 調味料を売るお店ならクッキングスタジオでのレッスンで課金
  • 化粧品を売るお店ならメイク術レクチャー イベントで課金

このようなレッスンやイベントでの課金です。

 

これらのレッスンやイベントでは、貴社・貴店の商品を使うユーザー同士のコミュニティーも生まれます。

 

これはマーケティング効果が極めて大きいんです。整理すると、

  1. 貴社・貴店の商品を活用する体験の場で課金
  2. 参加者=商品を使うユーザー同士のコミュニティーが発生
  3. コミュニティーの楽しさゆえ参加者は貴社・貴店のファンになる
  4. ファンとなると、ファン=イベント参加者の友人知人への口コミも発生
  5. 広告不要で新規客も獲得

こんな良いことづくめなのです。新規顧客の獲得費用はマーケティング担当者の悩みのタネ。そんな集客の悩みを一掃するのが「商品を用いた利活用体験課金」といえます。

 

「値下げ競争に打ち勝つためにコストカットだ!」と消耗戦を延々と続けるまえに

  1. ジャパネットたかたのセット販売&ストーリー訴求
  2. 商品を用いた利活用体験課金でのファンコミュニティー作り

この2つをぜひ試してみてください。 

【百貨店】プロダクトアウトで作られた?VR版伊勢丹は失敗する

縮小が続く百貨店業界。新型コロナ禍でさらに危機的状況です。

市場規模はピーク時の10兆円弱から約6兆円へ縮小

市場規模はピーク時の10兆円弱から約6兆円へ縮小

そんな中こんな記事が!

www.gizmodo.jp

メディアやIT界隈に長らくいる方は3DCGで構成されたインターネット上に存在する仮想世界サービスSecond Lifeを思い出して、

いやぁ、この手の取り組みは難度が高いでしょ


…と感じるかもしれません。ところが、日経の下記記事によるとSecond Lifeが新型コロナ禍をきっかけに再燃とのこと。
 

www.nikkei.com

伊勢丹新宿店がネットで接客という報道を観たとき「ECを好むユーザーのインサイトを無視しているので伊勢丹の取り組みは失敗しそう」と私は感じました。
 

sho.hateblo.jpですが、Second Life再燃というトレンドを踏まえるあるいは筋があるのでしょうか。残念ながらそうは思えません。

  • 百貨店を贔屓にしている年齢層
  • Second Lifeに夢中な層


この2つはやはりズレがあるような気が…。「技術的にこんなことができるからやってみようか」というプロダクトアウトの新規事業は高確率で失敗します。

 

百貨店業界の雄・伊勢丹の取り組みの成否から目が離せません。

【不動産テック】独居老人増加でも事故物件は増加しないよ、なぜなら…

今回は不動産業界について。

newspicks.com有料記事なので一部引用します。

「死後数週間から1カ月近くたつと、腐敗が進んで強い臭いが漂い、床には人型の染みが残る」(清掃業者)ためだ。
臭いが取れず物件をフルリフォームしたり、臭いが消えるまで一定期間待つこともある。

こうした事故物件が増えているというのです。

よく言われている「事故物件増加トレンド」の背景

以下の背景があり、独居老人の増加トレンドがこの先数十年は継続するのは必至です。

  1. 生涯未婚率上昇
  2. 高齢化社会の進展

その結果以下のようになる??…

  1. 独居老人の孤独死増加
  2. 発見が遅れ遺体の腐敗が進んで
  3. 事故物件が増加

これが冒頭の記事をはじめとしてよくいわれる話です。ですが、事故物件がこのまま増加するとは私は思えません。理由は次の2つです。

理由1:増加する独居老人を「お客さん」として避けられなくなる

確かに2021年時点では、民間の賃貸物件に独居老人が入居しようとしても様々な理由で断られます。

 

ですが、人口減少は2009年来既に始まっています。不動産業界にとってより意味のある「世帯数」も2023年には減少に転じると予想されています(「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」

 

他方、独居老人は増加が続き2040年には全世帯数の40%に到達(高齢世帯、45%超が一人暮らしに 2040年の東京・大阪)。

 

賃貸物件オーナーにとっての市場としての「世帯数」が減少する中、独居老人は増加。賃貸物件オーナーが独居老人を断れない時代は目前なのです。

  • 確かに、不動産業界にとっては事故物件が増えることはリスク
  • だからといって、高齢化が進む中 独居老人の入居を断ると空室増

…という状況になるのですから。

理由2:独居老人の孤独死による事故物件化を防ぐテクノロジーの導入が既に始まっている

冒頭の記事には下記の事例があげられています。

こうした事態を回避するため、入居者の異変を早期発見すべく、室内に赤外線センサーを設置して、一定期間動きがなければ警備員が急行するサービスの活用も広がっている。

この赤外線センサーでの異変察知の取り組み以外にも、テクノロジーのチカラで事故物件化を防ぐサービスは今後拡大するはずです。

 

なぜなら、不動産会社や賃貸物件オーナーが自分のビジネスの障害となる事態を放置するわけがありませんから。

 

例えばApple Watch

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アップルウォッチは初代以来ずっと愛用しています

ご存知のとおりApple Watchは心拍数を常に計測しています。遠くない未来。Apple Watchユーザー向けに以下のようなサービスを提供するヘルステックスタートアップは現れるはず。

 

【1】心停止した際の救命救急サービス

 

あるいは、孤独死による事故物件化を抑止する不動産テックのひとつとして…

 

【2】独身中高年男性の賃貸物件新規契約者にApple Watchによる孤独死防止サービス加入義務化

充電時間を超える時間にわたってバイタルサインが消えたら管理会社が急行するサービス。これなら、遺体の腐敗も起こらず事故物件化を防げます。 

 

しかも、ステークホルダー全員が満足するサービスなのです。

 

入居者にとっての孤独死防止サービス

  • 一人暮らしの高齢者となっても入居を断られずに済む
  • バイタルサインに異変がでたら救急対応で安心!

不動産オーナーにとっての孤独死防止サービス

  • 入居希望者で今後増える独居老人を受け入れることで空室率低減
  • 独居老人を受け入れても事故物件化を防げる

これらテクノロジーによる課題解決の結果、孤独死も事故物件も減少。かつ、皆が満足という近未来です。

 

「今のトレンドがそのまま続く」という思い込みではいろんなビジネスチャンスを逃しかねませんよね。賃貸業界の未来を考える時だけではなく、私たち自身が仕事をする業界の未来を考えるときにも注意していきたものです。