サービス設計で悩むプロジェクトリーダーは些事を捨て演繹法でイノベーション
新しいサービスやプロダクトを作ろうとすると、周りから様々な酷評や圧力に遭遇することがあります。それで心が折れそうになるプロジェクトリーダーもいらっしゃるかも知れません。
でも、思い起こしてください。
スマートフォンという新たな領域を作ったiPhone。10年前の2008年当時、日本で発売された直後はiPhoneでさえもボッコボコに叩かれていました。
iPhone3Gは10年前の日本では猛バッシング
iPhoneが日本でも発売開始された直後の2008年夏。1995年から13年間も使っていたPHSからiPhone3Gに私は乗り換えました。
2008年当時はmixi(懐かしい)でも2ch(懐)でもiPhoneはバッシングの集中砲火。
その後、iPhoneがどうなったかは皆さんご存知のとおり。「iPhoneは駄目。使えない。売れない」というトンデモ評価が日本ではなぜ蔓延したのでしょうか?
日本とシリコンバレーにおける論理的思考の違いが原因
前掲のバッシングに象徴されるのはスペック至上主義(全部入り好き)が背景にあります。では、スペック至上主義はどこから生まれるのか? その背景を考察した以下の記事が興味深いです。
diamond.jp上記記事で詳述されている「帰納法発想」が、日本人&メーカーのスペック至上主義が生まれる原因だとすると腹落ちします。
日本:帰納法的アプローチで開発
帰納法とは次のように定義されています。
個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則・法則を見出そうとする論理的推論の方法のこと。
出典:Wikipedia
さまざまな個別・特殊な事例から結論を導き出すのが帰納法。これがプロダクト開発の現場だと…
- ユーザーインタビューを行い
- 個々のユーザーの意見を帰納法的に取り扱うことで
- ユーザーの意見すべてをプロダクトに取り入れようとする
上記のように「10人の意見を全部取り入れるパターン」もあれば「10人の意見をあつめて10で割る」というのも帰納法的開発手法の誤謬にあてはまります。
シリコンバレー:演繹法的アプローチで開発
他方、記事中にある「演繹法発想」だと全部入りとは無縁です。
演繹法とは次のように定義されています。
普遍的な前提から、より個別的・特殊的な結論を得る論理的推論の方法
出典:Wikipedia
つまり、先に普遍的な前提があるのが演繹法。これがAppleの場合だと…
- スティーブ・ジョブズが「欲しい!」と思ったものを作る
- それを市場に出す
ジョブズが欲しいと考えたものが普遍的な前提扱いなのです。
そりゃ、竹を割ったようなクリアなプロダクトになりますよね。10人の意見を全部取り入れるわけでもなく、10人の意見を足して10で割ったわけでもないのですから。
データドリブン開発はどうなのよ?
シリコンバレーといえば、テストから得られた各種指標(データ)をもとにプロダクトを作る「データドリブン開発」もよく使われています。
「それって、個々のユーザーの意見を取り入れているのでは?」と思いがちですがそうではありません。
データが示した結果から「ある仮説が間違っていた」という結論をスパッと出すのです。先のAppleの例だと…
- 「ジョブズが『欲しい』とした◎◎を市場は求めていなかった」という結論を得て
- 次の仮説を新たにたてて開発を進める
…わけです。帰納法的アプローチの「全部取り入れる」「足して割る」という手法とは無縁です。
私たちが磨くべきは演繹法的思考
引き算が肝要なUIUXの組み立てにも、この「演繹法発想」はうまく合致します。
初代iPhoneがホームボタン以外の物理ボタンを一掃なんて、ユーザーインタビューを繰り返していたらできません。「戻るボタンが欲しい」などいろんな意見がユーザーから飛び出すわけですから。
つまり、日本で働く私たちに不足している=磨くべきは「演繹法的思考」。「普遍的な前提は何なのか?」を日々の仕事でも常に問い続けていきたいですね。