ブログ!七転び八起き

出版編集者→ITスタートアップ起業→事業開発コンサルをやっている太田祥平のブログです。

欲しい!イーロン・マスクの爪の垢

今週、一番しびれたニュースはこちら。

www.asahi.com

半端ないスピードでプロジェクトを実現。このスピード感しびれます。国家主導の宇宙開発が色あせて見えたりも。

きたる5月6日には、日本(JSAT)の人工衛星もスペースXのファルコン9で打ち上げ予定だとか。ロケットを毎月打ち上げている状態です。

  1. こうした商いとしてのロケット打ち上げを行いつつ(足元の確保)
  2. 将来に向けたロケット回収のテストもその打ち上げでひたすらチャレンジ(未来への布石)
  3. そのテストにクライアントの同意も取り付ける

というやり方がいいですね。規模の違いはあれわたしたちの普段の仕事もこういうやり方をしなきゃ。足元と未来!

イーロン・マスクの爪の垢を煎じて飲ませてもらって、わたしもスピードアップしたいところ。え? 爪の垢では足りない? うーむ ^^;

4月8日はとても悲しい日

今日、4月8日はとても悲しい日だ。

編集者時代の友人編集者・鈴木さんが亡くなったという知らせがあった。彼のことを末永く記憶に留めたい。だから、長文になるけれど文章を残したいと思う。

彼との出会いは10年ほど前。とある出版社の同じ編集局に所属した時だ。勝ちパターンの手順を守り本を作る僕。他方、彼は違った。かなりアクロバティックな本作りをしていたのだ。それは文字通り「ええっ!?」と驚くような手法。通常、そのような編集手法ではうまくいかない。

でも、信じられないことが続く。きちんと本ができる。さらに、売れ行きも好調なのだ。彼の主戦場は格闘技本だったが、一般書籍を手がけてもヒット作を生んでいた。「どうして??」と驚く僕。しかし、彼と同じフロアで仕事を続けるうちにその理由が分かった。

  • 愛されキャラ
  • 人懐っこい
  • とにかく物腰が低い

彼が備える3点セットが強みだった。そういう彼だからこそ、取材対象者・ライター・カメラマン・デザイナー・印刷会社の担当者まで、彼の本作りに関わるみんなが「鈴木さんのために」ということで、アクロバティックな本作りながらも売れる本を生み出していたのだ

今思うと、僕の知る「凄い編集者」はみんなそういうキャラクターと言える。文藝春秋の菊池さん(菊池寛のお孫さん)・扶桑社の安堂さん(インド式計算ドリルブームの仕掛人)などなど。鈴木さんを含めて皆さん愛されキャラで人懐っこくて、とにかく物腰が低い。

逆に、尊大でふんぞり返って怒鳴り散らす編集者もいた。でも、そういう人はヒット作を時折生み出しても長続きしなかった。

この「愛されキャラ最強法則」は編集者にかぎらない。

何がしかのプロダクトやサービス作りにおいても同じことが言える。尊大なリーダーは一時的に好調でも長続きしない。愛されキャラのリーダーこそが魔法のようにヒットを生み出し続ける。愛されキャラが率いるチームの発揮するチーム力は絶大なのだ。

そんな鈴木さんとは、仕事だけではなくプライベートでもいろいろとお付き合いをさせていただいた。彼の奥さんと彼が出会った合コンを設定したのも僕だった。その合コン参加者で一番キレイで性格もステキな女性だった彼女が鈴木さんを選んだのも彼の「愛されキャラ」ゆえだろう。

3月23日に彼が脳梗塞で倒れた時。きっと無念だったろうと思う。そんなステキな奥さんをひとりぼっちにする訳にはいかないという想い。だからこそ、最後の力を振り絞って一時的に意識を回復したのではないか。

鈴木さんの足元にも及ばないと思うけれど、この先の人生1日1日を「愛されキャラ」で「人懐っこく」「物腰低く」僕も仕事をしていけたらと思う。それが彼へのメッセージになると信じて。

村上春樹は、IT起業家思考の持ち主だった!

f:id:otasho:20150426123859p:plain

表題を見て「えがおの本を休止して太田もついに頭のネジが吹き飛んだか…」と同情した皆さんちょっと待って下さい。

 

村上春樹さんが読者の質問に期間限定で答えている「村上さんのところ」で春樹さんは次のように記しています。

小説に即していえば、空想を書いていただけでは小説になりません。自分の中にある物語を深いところから掘り起こして来なくてはなりません。ゼペットじいさんが木の塊の中からピノキオを見つけ出すみたいに。つまりゼペットじいさんはピノキオを作ったのではなく、見つけ出したのです。だからこそピノキオは生命を持つことができたのです。

空想とは物語の萌芽なのでしょうか? - 村上さんのところ/村上春樹 期間限定公式サイト

 

ココで言う「空想」とはITスタートアップの多くが持っている「仮説」「ビジネスモデル」も同じですよね。それを形にしただけではモノにならないと村上さんは言っているわけです。

 

ではどうすればモノになるのか。

 

「木の塊の中からピノキオを見つけ出す」という事がそこに至る道であるわけです。私を含めたITスタートアップの失敗例の多くがそこを勘違いしているか理解が浅いのです。

 

ダメなスタートアップ

「世界を変えるサービスを作ってやる!」

春樹さん的なイケているスタートアップ
「ゼペットじいさんはピノキオを作ったのではなく、見つけ出したのです」

 

つまり、空想である「仮説」「ビジネスモデル」よりもピノキオを見つけ出す作業こそが重要。そうして初めてあなたのプロダクト=「ピノキオは生命を持つことができ」る。

 

ピノキオを見つけ出す手法は「ABテスト」の繰り返しや「グロースハック」かもしれません。でも、頭の悪いボクはそうした手法を魂の奥底から理解してなかったわけです。春樹さんの言葉に触れて遅まきながら痛感できました。春樹さんの言葉でボクみたいなアホもついにわかったわけです。

 

春樹さんがいうように、それを見つけ出す作業は「深いところから掘り起こして来」る作業。一筋縄ではいきませんよね。多くのスタートアップがそこで苦労しているように。

 

あー、えがおの本をやっている時に春樹さんの言葉に出会いたかったなー!