ブログ!七転び八起き

出版編集者→ITスタートアップ起業→事業開発コンサルをやっている太田祥平のブログです。

店舗の売上向上をしたい人はヒートマップに注目!メガネ店に学ぶデータドリブンな店舗レイアウト変更

 

店舗の天井に大量のカメラを配置。それにより無人レジなしコンビニを実現したAmazon Go

これにより、ネット通販以外のオフライン店舗である実店舗でも、ウェブ同様に客の導線をトラッキング(追跡)できるようになります。

客の動きをトラッキング&改善施策を行うと各種数値がUp

すなわち、客が店舗内でどのように移動して

  • 購買に至るか
  • 買い物をせず店舗を立ち去るか

これらをデータ化できるようになるのです。

他方、Amazon Goと同様に客の導線をトラッキング化・データ化する事業を日本で行っているITスタートアップがあるという記事が以下です(NewsPicks有料記事)。

newspicks.comそのスタートアップとはABEJA(アベジャ)。私がITスタートアップ・えがおの本を経営していた2013年、同社代表の岡田さんにとあるプロジェクトでいろいろ相談をしていました。

2013年当時、顔認識システムをアベジャは全面に押し出していたはずです。

その顔認識技術を2018年現在は、リアル店舗のデータ収集&解析ビジネスとして利活用しているのですね。

さて、本題は先のNewsPicks有料記事。

事例として出されている、老舗メガネ店でのデータに基づいたレイアウト変更のテスト結果と売上向上&離脱率低下が興味深いです。

取得解析したデータ

  • 来店者の顔認識による年齢・性別といった属性取得
  • 来店者の店内での行動を滞在・交通量を示すヒートマップ化(店舗内の俯瞰図で赤味が強い部分が滞在時間が長い場所←→青味が強いと素通りしている場所)

それを踏まえての目標設定

  • 来店者を増やす
  • 来店者の滞在時間を長くする
  • 店の奥まで来店者に入ってきてもらう

試行錯誤

  • 店の最前面は、格安メガネ(ノンブランド品)ではなく1万円超のメガネ(ブランド品)に変更

 →滞在時間増→格安メガネのJINSなどと違い価格訴求は有効ではないと判明

  • 店頭奥へ向かうに従って価格帯をUpする「価格帯ゾーニング」でのレイアウトに変更

 →滞在時間増&店舗奥まで客が入るようになった

  • 何を置いても滞在してもらえない「店舗内の死角」には、問い合わせが多い商材(子どもメガネ)を配置

 →滞在しない場所へ問い合わせ客を誘導する。それによる店全体のパフォーマンス増

店長や店員の印象とは異なるのがヒートマップ

前掲の試行錯誤にあるような施策で同店は各種数値が向上し売上増も叶えたそうです。また、記事中での以下の指摘はとても興味深いです。

店員は「年配層の客が多い」という感覚を持っており、われわれの集計だと20〜30代の客は35%ほどでした。
しかし、アベジャのデータでは、20~30代の客が実に「60%」を占めるという数値がでたのです。

店頭だけチラッと見て離脱する客は店員の印象には残りません。接客した相手の印象が強く残るのが店員(人間)です。

それを、店舗内の客の行動をヒートマップと来客者の性別年齢属性で分析するとまるで異なる結果となる…。

  • 年齢層が実は低いとデータで判明

   ↓

  • 若年層向けのメガネラインナップを強化

   ↓

  • 売上増

という施策による変化は「なるほど〜!」という感じですね。ちなみに、アベジャの技術は顔認識から年齢と性別も推定できるシステムです。

社員の印象に基づいた議論よりデータに基づいた改善が有効

多くの会社の会議では、社員おのおのが自分が持つ印象や業界常識で「あーだ」「こーだ」と持論を展開してプロジェクトを進めようとします。

ですが、このメガネ店での実例でわかるようにデータに基づいた(=データドリブン)施策こそが売上増に結びつきます。

私たち自身のビジネスでも「データドリブンこそが売上増につながる」という原則を踏まえて仕事を行いたいですね。

 

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なんと15分の1!レジなし店舗AmazonGoと一般コンビニの違いは革命的

2018年1月23日にアメリカ シアトルで一般客向けにもオープンした無人・レジなしコンビニAmazonGo。日経電子版が詳報を出しています。

www.nikkei.com映像中の利用者の感想が革命的なユーザー体験を端的に示しています。

難しいことは何もない。店に入って品物をとって出るだけ。クールだ

「なるほど」と思って整理してみました。

AmazonGoは3STEP

無人&レジなしのAmazonGoはたったこれだけ!

  1. QRコードをゲートでかざして入店
  2. バッグに欲しいものをどんどん入れて
  3. お店を出る

日本のコンビニは15STEP

他方、日本のコンビニだと5倍の手間がかかります。

  1. お店に入り買い物かごを手にする
  2. 購入商品をカゴに入れる
  3. レジへ並ぶ
  4. 数十秒〜数分待つ
  5. 順番が来たら商品を入れたカゴを店員に渡す
  6. 「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれる
  7. 財布からポイントカード取り出し店員へ差し出す
  8. ポイントカードをリーダーに店員が通す
  9. ポイントカードを返してもらい財布に戻す
  10. バーコードリーダーで商品のバーコードを店員が読み取り各商品の価格を確認
  11. 商品をレジ袋に店員は入れる
  12. 店員から合計金額を告げられる
  13. お札や硬貨で店員へお金を渡す
  14. お札や硬貨でお釣りを店員から受け取る
  15. レジ袋に入った商品を手に店を出る

店員が行う動作の間も客は待たされます。このかったるさ&レジ前行列が苦痛で我慢ならず、私はコンビニにほぼ行かなくなりました。

このユーザー体験の差、なんとかしないとみんなAmazonGoを選ぶと思うのですが?

私たち客は暇人ではないのです。

ユーザー体験にある天と地の差は致命的

このニュースに対して、NewsPicksのコメント欄では

  • 大量に設置されたカメラで店舗内における客の導線をWeb同様にトラッキングできる
  • ある商品を客が手に取る→棚に戻すといった客の心情が現れる挙動も含めたビッグデータの活用

などの指摘がありました。

確かにそうです。Webと同じく実店舗のレイアウトもデータドリブンで改良できるようになります。第六感やセンスに頼る店舗リニューアルなんて古めかしい時代がいよいよ終わりを告げます。

また、日本でレジ自動化の施策として進められているICタグでは上記の利点はありません。ICタグの時代は始まる前に終わってしまうのでしょうか…。

とはいえ一番気になるのは冒頭で比較したユーザー体験の差。いち消費者として一刻も早く日本にもAmazonGoが上陸して欲しいものです。

サービス設計で悩むプロジェクトリーダーは些事を捨て演繹法でイノベーション

新しいサービスやプロダクトを作ろうとすると、周りから様々な酷評や圧力に遭遇することがあります。それで心が折れそうになるプロジェクトリーダーもいらっしゃるかも知れません。

でも、思い起こしてください。

スマートフォンという新たな領域を作ったiPhone。10年前の2008年当時、日本で発売された直後はiPhoneでさえもボッコボコに叩かれていました。

iPhone3Gは10年前の日本では猛バッシング

iPhoneが日本でも発売開始された直後の2008年夏。1995年から13年間も使っていたPHSからiPhone3Gに私は乗り換えました。

2008年当時はmixi(懐かしい)でも2ch(懐)でもiPhoneはバッシングの集中砲火。

  1. ワンセグを見られないw
  2. 赤外線通信(懐)ができないw
  3. おサイフケータイを使えないw
  4. SDカードを入れられないw
  5. っていうか、iPhone3Gは重すぎw

その後、iPhoneがどうなったかは皆さんご存知のとおり。「iPhoneは駄目。使えない。売れない」というトンデモ評価が日本ではなぜ蔓延したのでしょうか?

日本とシリコンバレーにおける論理的思考の違いが原因

前掲のバッシングに象徴されるのはスペック至上主義(全部入り好き)が背景にあります。では、スペック至上主義はどこから生まれるのか? その背景を考察した以下の記事が興味深いです。

diamond.jp上記記事で詳述されている「帰納法発想」が、日本人&メーカーのスペック至上主義が生まれる原因だとすると腹落ちします。

日本:帰納法的アプローチで開発

帰納法とは次のように定義されています。

個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則・法則を見出そうとする論理的推論の方法のこと。

出典:Wikipedia

さまざまな個別・特殊な事例から結論を導き出すのが帰納法。これがプロダクト開発の現場だと…

  1. ユーザーインタビューを行い
  2. 個々のユーザーの意見帰納法的に取り扱うことで
  3. ユーザーの意見すべてをプロダクトに取り入れようとする

上記のように「10人の意見を全部取り入れるパターン」もあれば「10人の意見をあつめて10で割る」というのも帰納法的開発手法の誤謬にあてはまります。

シリコンバレー演繹法的アプローチで開発

他方、記事中にある「演繹法発想」だと全部入りとは無縁です。

演繹法とは次のように定義されています。

普遍的な前提から、より個別的・特殊的な結論を得る論理的推論の方法

出典:Wikipedia

つまり、先に普遍的な前提があるのが演繹法。これがAppleの場合だと…

  1. スティーブ・ジョブズが「欲しい!」と思ったものを作る
  2. それを市場に出す

ジョブズが欲しいと考えたものが普遍的な前提扱いなのです。

そりゃ、竹を割ったようなクリアなプロダクトになりますよね。10人の意見を全部取り入れるわけでもなく、10人の意見を足して10で割ったわけでもないのですから。

データドリブン開発はどうなのよ?

シリコンバレーといえば、テストから得られた各種指標(データ)をもとにプロダクトを作る「データドリブン開発」もよく使われています。

「それって、個々のユーザーの意見を取り入れているのでは?」と思いがちですがそうではありません。

データが示した結果から「ある仮説が間違っていた」という結論をスパッと出すのです。先のAppleの例だと…

  1. ジョブズが『欲しい』とした◎◎を市場は求めていなかった」という結論を得て
  2. 次の仮説を新たにたてて開発を進める

…わけです。帰納法的アプローチの「全部取り入れる」「足して割る」という手法とは無縁です。

私たちが磨くべきは演繹法的思考

引き算が肝要なUIUXの組み立てにも、この「演繹法発想」はうまく合致します。

初代iPhoneがホームボタン以外の物理ボタンを一掃なんて、ユーザーインタビューを繰り返していたらできません。「戻るボタンが欲しい」などいろんな意見がユーザーから飛び出すわけですから。

つまり、日本で働く私たちに不足している=磨くべきは「演繹法的思考」。「普遍的な前提は何なのか?」を日々の仕事でも常に問い続けていきたいですね。